HOME > EVENTS > 「ビジネスと人権」連続研究会

「ビジネスと人権」連続研究会

≪2024.11.28掲載≫
≪2025.4.22更新≫
 


アジア国際法学会日本協会「ビジネスと人権」連続研究会

 
アジア国際法学会日本協会では、この度、「ビジネスと人権」をテーマとする連続研究会を開催することとなりました。2024年度と2025年度にわたって計4回程度、講師と参加者が自由に議論できる、比較的小規模な研究会を予定しています。
 
<背景>
2011年に国連人権理事会にて全会一致で承認され、国際的な基準として確立した国連ビジネスと人権に関する指導原則(指導原則)は、アジアでも経済活動、外交交渉、司法手続、市民社会運動など、さまざまな場面で大きな影響を与えています。指導原則は、国際法の原則に基づき、国家に人権保護の義務を負わせる一方で、ガバナンスのギャップによる人権侵害を防ぐために企業にも人権尊重の責任を求めます。また、人権侵害に対する救済についても国家と企業の役割を明示しています。
 
日本政府は2020年にビジネスと人権に関する行動計画(NAP)を策定し、指導原則の国内普及に取り組んでいます。現在、外務省が主導するステークホルダーから成る諮問委員会や作業部会で改訂に向けた議論が行われています。また、外務省と経産省が企業に対するアンケート調査の結果に基づき、2022年9月には「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定しました。これは企業に自主的な取り組みを促すものであり、公共調達における人権尊重が進むことが期待されていますが、日本における企業の取り組みにはまだ課題が多いと言えます。
 
一方、欧州では紛争鉱物規制や英国現代奴隷法など、特定の問題に特化した法律や、フランスの人権デュー・ディリジェンス法、ドイツのサプライチェーン・デュー・ディリジェンス法など、企業に人権デュー・ディリジェンスの実施を義務付ける法律が進められています。北米では、強制労働などに由来する製品の輸入規制が行われています。2024年には欧州でコーポレート・サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令が採択され、アジアにも影響が及んでいます。
 
アジアでは、原材料調達現場や製造・加工工場における労働者の権利、開発に伴う強制立ち退きの問題、森林や水源など自然資源の利用による先住民族の権利などの人権問題に対する取り組みが急務です。また、欧米市場へのアクセスを確保するためにも、欧米企業からの要望に応じてアジアの企業による人権への取り組みが進められています。東南アジアでは、2019年のタイのNAP策定、2022年のインドネシア及びベトナムのNAP策定などの政策にもつながっています。
 
 
<研究会の持ち方>
・各研究会は、スピーカーの人数およびテーマを勘案し、活発な議論ができるよう、小・中規模の参加人数で行い、各研究会毎に参加者を募集いたします。
 
・各研究会の議論の成果は簡潔なレポートにまとめ、アジア国際法学会日本協会のウェブサイトに公表の予定です。
 
・研究会を数回重ねたのち、研究会での議論を踏まえた公開のシンポジウムの開催を検討しています。
 
 
<第1回研究会> ASEAN におけるビジネスと人権の施策
 
<第2回研究会> 気候変動と人権–アジアにおける「清潔で健康的かつ持続可能な環境に対する権利」の意義