≪2017年9月4日掲載≫
8月25~26日、ソウルのロッテホテルにおいてアジア国際法学会の第6回大会が開催されました。今回のテーマはAsia and International Law in Times of Uncertaintyという時宜を得たもので、参加者は約600名、潘基文前国連事務総長の基調講演に続いて開かれた全体会合(2日目にも開催)のほか、全部で32の分科会が開かれるという大規模な大会でした。
全体会合や分科会の議論の内容も充実したもので、白珍鉉判事、朴基甲教授らを中心とする主催者の入念な準備のおかげで非常に有意義な大会となったと思います。あえて運営上の問題点を指摘するならば、第5回大会ほどではありませんでしたが、分科会に報告者を詰め込みすぎて時間が足りなくなったり、逆に出席登録をしながら現れなかった報告者がいたりして、将来に課題を残す部分もありました。なお、大会に先立って延世大学校で「若手フォーラム」(Junior Scholars’ Workshop)が開かれ、こちらも盛況だったとのことです。日本人若手の参加もありました。
日本協会執行部からは、私のほか、国谷副理事長、西海事務局長らが出席しました。韓国駐在の各国大使を集めて議論するセッションでは、かつて外務省国際法局長として日本協会の運営に関与された長嶺大使の参加もありました。また、法務省訟務局国際裁判支援対策室から局付(若手弁護士の出向者)が4名も参加していたことが印象的でした。なお、日本から参加した分科会報告者は次のとおりでした(敬称略・五十音順)。
荒木一郎(横浜国立大学)
大沼保昭(東京大学)
掛江朋子(横浜国立大学)
木村ひとみ(大妻女子大学)
小島千枝(武蔵野大学)
佐藤安信(東京大学)
寺谷広司(東京大学)
豊田哲也(国際教養大学)
西海真樹(中央大学)
西本健太郎(東北大学)
松田浩道(国際基督教大学)
山本英嗣(東京外国語大学)
柳赫秀(横浜国立大学)
大会終了前にアジア国際法学会の総会が開かれ、次期執行部を支える理事を選任しました(日本人理事は、吾郷教授、国谷弁護士と私)。また、今回創設されたPaik Choong Hyun賞として、次に掲げる最近逝去したアジア人国際法研究者・実務家の遺族へ4000米ドルずつが贈られました。
– Judge C.G.Weeramantry
– Judge Florentino Feliciano
– Judge Wang Tieya(王鉄崖)
– Professor R.P. Anand
さらに、Asian Journal of International Law 2017年度若手研究者賞の授賞式が行われ、Asian Journal of International Law, vols. 1-5に掲載された29編の論文のうち、優秀な論文を書いた次の三氏が受賞しました。Viktor Kattan氏(シンガポール国立大学研究員、“Decolonizing the International Court of Justice: The Experience of Judge Sir Muhammad Zafrulla Khan in the South West Africa Cases”)、Sun Thathong氏(タイ、“Lost in Fragmentation: The Traditional Knowledge Debate Revisited”)、Kalana Senaratne氏(スリランカ、“Internal Self-Determination in International Law: A Critical Third-World Perspective”)。三氏には、賞金としてケンブリッジ大学出版会の出版物購入券250ポンド分とアジア国際法学会会費1年分が贈呈されました。
その後開かれた新理事会(第19回)において、互選により新執行部の陣容を次のとおり決定しました。
理事長 Harry Roque下院議員・教授(国籍フィリピン。以下同様)
事務局長 Antony Anghie教授(スリランカ)
会計主任 国谷史朗弁護士(日本)
副理事長(東南アジア) Sorajak Kasemsuvan教授(タイ)
同(東アジア) 馬新民・外交部条約法規司副司長(中国)
同(南アジア) Upendra Acharya准教授(ネパール)
同(その他地域) 後日決定
同(大会主催国) Francis Jardeleza判事(フィリピン)
次期大会(第7回)については、フィリピンから、2019年中にケソン・シティのセダホテル(Seda Vertis North)で開催したいとの意向表明がありました。とりあえずのテーマはRethinking the Foundations of International Law, Finding Common Solutions to Contemporary Civilizational Issues from an Asian Perspectiveとのことですが、詳細は企画委員会で検討することとなりました(企画委員会はMerlin Magallonaフィリピン大学教授とAcharya副理事長が共同議長を務めます)。
また、次期大会に先立ち、地域会議(Regional Conference、いわゆる中間大会)を2018年10月に北京で開催することが決定されました。アジア国際法学会の理事会(第20回)もここで併せて開催されます。
アジア国際法学会日本協会
理事長 最上敏樹