≪2015年12月15日掲載≫
11月26~27日、バンコクのプラザ・アテネホテルにおいてアジア国際法学会の第5回大会が開催されました。今回のテーマはInternational Law and the Changing Economic & Political Landscape in Asiaというもので、全体会合のほか、全部で33の分科会が開かれるという大規模な大会でした。26日午前の開会式では、パッチャラキッティヤーパー・マヒドン王女(ワチラーロンコーン皇太子の長女)が開会演説をしたのですが、同王女はコーネル大学で法学博士号取得後、在ウィーン・タイ王国国際機関代表部大使などの公職を経て現在は検察官を務めているという経歴の持ち主で、演説の内容もSustainable Development Goalsに関する実質的なものでした。続く全体会合の出席者は、小和田恒ICJ判事のほか、パキスタンのアジズ元首相、フィリピンのカマチョ元財務相、薛捍勤ICJ判事、モクタンASEAN事務局次長という錚々たる顔ぶれで、今大会までアジア国際法学会理事長を務めたスラキアット氏の幅広い人脈を示すものとなっていました。2日目の全体会合では、アフリカ国際法協会、中南米国際法学会、国際法協会、欧州国際法学会、米国国際法学会から理事長(またはそれに準じる地位の代表)が集まり、一層の国際協調の必要性を確認した上でそれぞれの学会が抱える悩みなどを披露するという面白い試みでした。
以上のように、アジア国際法学会の国際的認知度向上という意味では成功した大会であったと思います。もちろん各分科会でも実質的な議論が行われたのですが、全体会合に時間をとられて時間が足りなくなったり、出席登録をしながら結局現れなかった報告者が複数いたりして、大会運営という点では将来に課題を残す部分もありました。なお、大会と並行して近くの司法省の建物内で「若手フォーラム」が開かれ、こちらも盛況だったとのことです。
日本協会執行部からは、国谷副理事長のほか、大沼保昭会員、佐藤安信会員と荒木事務局長が出席しました(吾郷理事長はILOでの用務と重なったため、最上副理事長は大会直前の負傷のため、残念ながら出席がかないませんでした)。なお、日本人の分科会報告者は次のとおりでした(敬称略・順不同)。
高野明子(京都大学)
石川義道(静岡県立大学)
加藤紫帆(名古屋大学)
小保方智也(キール大学)
那須仁(オーストラリア国立大学)
大道寺隆也(早稲田大学)
豊田哲也(秋田国際教養大学)
山下朋子(京都大学)
荒木一郎(横浜国立大学)
大会終了前にアジア国際法学会の総会が開かれ、次期執行部を支える理事を選任しました(日本人理事は、吾郷教授、最上教授および国谷弁護士)。その後開かれた新理事会において、互選により執行部の陣容を次のとおり決定しました。
理事長 白珍鉉・国際海洋裁判所判事(韓国)
事務局長 Simon Chesterman教授(オーストラリア)
会計主任 国谷史朗弁護士(および本人の承諾が得られればShankardass弁護士(インド))
副理事長(東南アジア) Harry Roque教授(フィリピン)
同(東アジア) 馬新民・外交部条約法規司副司長(中国)
同(南アジア) Ganguli弁護士(インド)
同(大会主催国) 朴基甲教授(韓国)
次期大会については、韓国から、2017年の8月末又は9月初めにソウルのロッテホテルで開催したいとの意向表明がありました。暫定的な日程としては、初日(木)は第17回理事会と雑誌編集委員会、金~土に大会を実施して、土曜日に総会と第18回理事会、日曜日にエクスカーションというのが韓国提案です。とりあえずのテーマはInternational Law and Regional Cooperation in Asiaとのことですが、詳細は企画委員会で検討することとなりました(企画委員会は、李根寛ソウル大学教授と吾郷日本協会理事長が共同議長を務めます)。
また、次期大会に先立ち、会期間研究大会(Intersessional Conference)を2016年6月頃ハノイで開催したいという要望がベトナムの理事から寄せられていますが、本人が所用のためバンコクに来ることができなかったので、日程を含めた詳細は今後理事会と事務局とで詰めていくことになりました。
事務局長 荒木一郎